脱炭素に向け「石炭」は今どんな状況にあるのか?

脱炭素に向け「石炭」は今どんな状況にあるのか?

世界6位の石炭消費国日本

数億年前の植物が埋もれてできた石炭は、植物の化石ともいわれている「化石燃料」の一つです。日本では、発電のほとんどを火力にたよっており、火力発電所で熱エネルギーを得るため燃焼させているのが「石炭」です。かつては蒸気機関車などにも利用されていました。

蒸気機関車 資源ドットネット

2019年のデータでは、日本は世界第6位の石炭消費国となっていて、その消費量は1億3,920万トン。輸入量では世界第3位で1億3,850万トンと消費量とほぼ同じ量を輸入しています。ちなみに消費量1位は中国で、断トツの32億4,300万トンとけた違いの使用量です。2位はインド、3位米国、4位南アフリカ、5位インドネシアという順になっています。

日本が最も頼っている輸入元は大部分がオーストラリア、次にインドネシアとなっていて輸入の8割を占めています。

日本でも石炭を採掘している

日本でも少量ながら現在も石炭の採掘は行われています。北海道の釧路炭田には、釧路コールマインという日本で唯一の石炭生産会社があります。この会社が採掘している石炭は、釧路市の大地から太平洋の沖合に向かって炭坑を掘り進め、海底の更に下にある地層から石炭を年間53万トン採掘しています。(下地図がその所在地)

釧路炭田の埋蔵量はおよそ20億トン(200,000万トン)と推定されていて、日本で3番目の埋蔵量です。1位は同じ北海道の石狩炭田で、その埋蔵量は64億トン(640,000万トン)にもなります。日本一の埋蔵量を誇る石狩炭田では、炭鉱はすべて閉山し、小さな露天掘りの鉱山のみが残っています。

最盛期には800以上の炭鉱が開かれ、年間6,000万トンも採掘できていたのですが、第二次世界大戦後、産業の回復とともに貿易も盛んになり、海外の低コストな石油や石炭が手に入るようになると、国内の炭鉱は次々と閉山されていきました。

石炭事業の今後

日本は2050年までに脱炭素を目指す方針で進んでいます。この流れでは、大量の二酸化炭素を発生させる石炭による火力発電は閉鎖の方向となります。東芝などは石炭火力発電所の新規建設事業から撤退の方針を表明していて、関連する企業もそのエリアの事業を縮小方向にしています。資源会社や商社なども石炭事業から撤退の方針で一致していて、石炭事業への投資が急激に縮小していきます。

また、マスコミなどの情報により、原発の時のような住民運動が過熱すると、急激な環境への不安から反対運動により石炭事業縮小のスピードが加速されてしまいます。

しかし、新しいテクノロジーによる電力確保など石炭に代わるテクノロジーの整備にも時間とコストがかかるため、そう簡単には移行できないという状況も考慮していかなければなりません。

脱炭素の最も対極にいる「石炭」の利用は大きく形を変えていく事になります。

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