「廃棄」を「資源」へ!サーキュラー・エコノミー(循環経済)

「廃棄」を「資源」へ!サーキュラー・エコノミー(循環経済)

サーキュラー・エコノミーの概要

世界人口が増加していくなか、資源やエネルギーなどの需要も増大していっています。それに伴い廃棄物の量も増加し、森林の減少や温室効果ガスの増加などによる地球環境への影響が大きな問題になってきています。

サーキュラー・エコノミー(Circular Economy:循環経済)は、このような問題を根本から見直すための経済の考え方で、そもそもモノを作るときやサービスを展開する際に、新しい資源から生産し、消費、廃棄していくという流れを、循環させ、新しい資源に頼らなくても持続的にモノやサービスを提供できるように設計しておくものです。

3R サーキュラー・エコノミー

従来は3Rと呼ばれ「REDUCE:リデュース(削減)」「REUSE:リユース(再利用)」「RECYCLE:リサイクル(再生)」の取組みを軸に考えられていましたが、これらはすでにあるものをどの様に処理していくかという事ですが、サーキュラー・エコノミーはその前からの話しで、3Rになるようにデザインし、廃棄するものが基本的にはなく、資源を循環させ新しい資源の利用を最小限に抑えていくというものです。

2060年世界の人口は100億人へ

国連の調査によれば、2050年世界の人口は97億人に達する見込みです。そしてその10年後には100億人を突破すると言います。2018年の段階で資源の利用量は90ギガtでしたが、人口100億人になるとその量は167ギガtにまで達すると予想されています。これは現在よりも地球上の資源が必要になることを意味していて、地球の資源を自然から採掘することによる地球環境の変化や大気、水質、土壌などの汚染にもつながると予想されています。このような観点からも、現在すでにあるものの活用も含めたサーキュラー・エコノミー化が重要になってきます。

Global Material Resources Outlook to 2060より

ESG投資が進み、企業も本格的に参入する

ESG投資、すなわちEnvironment(環境)、Social(社会)、Governance(企業統治)の3つの観点をおさえて企業の将来性を評価していこうという動きが活発化しています。これは、永続的に企業が存在するうえでとても重要な事で、いくらイノベーションを持った企業であり、収益性に優れた企業であってもESGへの対応が書けている事によって、環境や社会の変化が起こった際に対応できないと判断され、投資が集まらなくなってくると予想されています。

投資家のマインドがこのような方向に動いてくると、企業もそれにあわせた形で会社の社会的価値を形成していく為、循環型社会が本格化していきます。

すでにAppleなどは、iPhoneなどの主力商品の設計はこのような観点からおこなっていて、2030年までに自社のサプライチェーンの100%カーボンニュートラル達成を約束しています。これもサーキュラー・エコノミーへの大きなシフトとなります。

カーボンニュートラル

この動きは、大企業のみならず、Appleのようにサプライチェーンを捲き込んで中小企業にまで展開されていく事でしょう。この先中小企業としても、ESG投資の観点からもこのような環境・社会への対応が求められて生きます。

サーキュラー・エコノミーのビジネス

サーキュラー・エコノミーは全てのビジネス分野で必要とされています。すでにはじまっているビジネスモデルとして製品のリサイクルなどがありますが、もっとたくさんの新しいビジネスモデルや消費者のマインドシフトも重要になってきます。「使い捨て」のような製品は今後評価されなくなり、長期利用可能な製品や消耗部分をアップグレードしたり、修理やメンテナンスを請け負うサービス業などが今まで異常に必要になってくるでしょう。

食品ロスをなくす

世界では、毎年、食品生産量全体の3分の1にあたるおよそ13億トンもの食料が廃棄されています。この中には、賞味期限切れや傷がついたり品質が悪いだけで、食べられるのにもかかわらず捨てられているものが沢山あります。エレンマッカーサー財団が主導するフードイニシアチブなどは、これらの食品ロス削減への取組を行っています。フードイニシアチブには世界中の食品関連企業が参加していますが、2020年8月、これに京都市が日本の自治体としては初めて加盟しました。財団の研究によれば、2050年までに食品の80%は都市部で消費されるといいます。これによって、より自然な形での食品が利用されて、消費地に近いところでの生産が必要になり、そしてなにより廃棄するという概念すらなくなると予想しています。

フードイニシアチブに加盟しているネスレなどはすでに2006年からの10年間で食品ロスを77%も削減しています。

Food initiative

所有しない・シェアリングエコノミー

乗り物などで言われるライドシェアなど、シェアリングサービスもサーキュラー・エコノミーの考え方の中では重要になってきます。広義な意味で言えば鉄道などはそれにあたります。今後は必要以上に所有するのではなく、利用頻度の少ないものはシェアリングエコノミーとして、製品購入から共同利用というサービスへのシフトで一人当たりの資源必要量を抑えていきます。

街中で見かけるレンタルサイクル
街中で見かけるレンタルサイクル

水の利用が多い服飾産業

服飾産業においてもこれら資源の利活用は重要な問題になっています。ファッション業界から排出される二酸化炭素量は全ての産業の中の10%も含まれています。そして、衣服を作る製造過程では沢山の水を消費します。衣料品の低価格化と量産化により、衣料品の生産量は世界中でこの15年の間に2倍以上に成長していますが、一方で流行などにより1着の衣服の利用回数は大幅に減っています。毎年世界の衣料消費量の1.5倍が廃棄されています。

ファッション業界では、これらに対応すべく、衣料品としての素材の見直しや再利用可能な循環型ファッションを意識した企業が増えてきています。

 

そもそも古着などの市場規模も拡大していますが、ZARAなども古着回収を積極的に行うようになっていて、回収後には新しい生地へと生まれ変わって新しい衣服として販売されます。ZARAのJOIN LIFEシリーズなどは、サステナブル素材として製造段階からサーキュラーエコノミーを意識したブランドになっています。

ZARAは100%店舗での衣類引き取り、100%セルロース繊維、持続可能なコットン・リネンなど、環境への対応をウェブサイトなどで表明しています。

日本を代表する服飾メーカーUNIQLOも2020年9月から「RE.UNIQLO」として日本をはじめ世界21の地域と国でダウン商品の回収をスタートし、11月2日にリサイクルダウンジャケットの販売を開始しました。

RE.UNIQLO

RE UNIQLOプロジェクト:https://www.uniqlo.com/re-uniqlo/

サーキュラー・エコノミーへの挑戦

既に多くの企業がサーキュラー・エコノミーの大切さを理解し、行動にうつしています。これらは全て地球という私たちに与えられている限られた環境を守っていく為に必要な行動です。企業が今後ESGの観点で評価されていくように、教育や研究開発の評価や人事などの分野にも問われてきます。

一般消費者としての視点からもサーキュラーエコノミーへの対応がせまられてきます。人々の生活の中に無理なくあたりまえのように定着するには社会全体でとりくむひつようがあります。

参考リンク

>>エレン・マッカーサー財団

>>The global circular economy network

>>環境省ローカルSDGs 地域循環共生圏づくり

>>CIRCULAR ECONOMY JAPAN(一社)サーキュラーエコノミージャパン