高まる洋上風力発電需要
21世紀のための再生可能エネルギー政策ネットワーク(REN21)のレポートによれば、世界中の風力発電の導入量は年々増加しており、2010年には2.9GWだった発電量は2020年の段階で35GWと10倍以上に達しています。ヨーロッパを中心に世界18ヵ国が導入を進めていて、今後導入予定の国も増えてきています。
我が国日本でも2020年12月に「洋上風力産業ビジョン」が公表され、2030年までに10GW、2040年までには30~35GWの導入を目指すことで合意され、計画が進んでいます。
世界初の洋上風力発電所が設置されたデンマークの企業
世界初の洋上風力発電所は1991年、デンマークの首都コペンハーゲンの南西にある小さな農村「ビンデビー」に作られた洋上発電所です。11基の風力タービンにより、2200世帯が1年間に消費するエネルギーを供給していましたが、現在では25年間の耐用年数を経て、2017年にコスト上の理由で廃止されました。その間、1998年には150MW級の洋上風力発電所をさらに5施設開発する計画などが進み、デンマークは風力発電の先進国となっていきました。
デンマークが風力発電先進国となった理由には、1973年の石油危機(オイルショック)があります。第四次中東戦争により、石油価格が引き上げられ、世界中の経済に大きな打撃を与えました。この時デンマークは原油の9割を中東からの輸入に頼っていたため、北海の石油や天然ガスの採掘に注力するため、国営企業としてデンマーク石油・天然ガス会社を設立しました。
風力発電を導入したのは、更に国内でのエネルギー自給率を高めるため、再生可能エネルギーとして風力の活用がうまくいき、2008年には、石油とガスからの脱却を目指し、火力発電所はバイオマス発電所へと移行していきました。原発の導入についての議論もあったようですが、核廃棄物の処理問題が解決できないのと、原発に必要な「ウラン」を輸入していては自給率があがらないため、再エネを選択したようです。この国営企業は、やがて民間企業として2017年デンマークだけでなく海外の洋上風力発電設備を手掛ける「オーステッド」という企業として生まれ変わりました。
洋上風力発電をリードする「オーステッド」
オーステッドは元々国営の石油・ガス会社でしたが、一転再生可能エネルギーのみを取り扱う民間企業となったものです。気候変動対策の観点からこのような大胆な事業変更を行ったことで、洋上風力では世界有数の企業となっています。
コーポレートナイト社が発表している世界の持続可能な企業100選に毎年上位選出されていて、世界的に評価の高い企業となっています。
株価は上場来堅調に推移しており、世界のサプライチェーンの乱れにより、一服感はあるものの、今後風力発電の普及拡大が予想される中、持続可能な企業体質の構築も完了し、まだまだ業績を伸ばしていく企業であることは間違いないでしょう。
オーステッドの社名の由来はおよそ200年前に電磁気を発見した物理学者「ハンス・クリスティアン・オーステッド」になります。日本法人はオーステッドジャパンとして東京都千代田区有楽町にオフィスを構えており、日本でも機運高まる風力発電によるグリーンエナジーの推進の一翼を担っています。