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日本のエネルギー計画 〜時代背景やその変遷

日本のエネルギー政策の概要

日本は2011年の東日本大震災後から大きなエネルギー政策の変革を余儀なくされました。従来安全でクリーンに電力を供給できる原発への信頼が大きく揺らぎ、新しいエネルギーへの解決策がないまま、それでも日々エネルギーを消費しています。

日本のエネルギーに対する政策は2002年にエネルギー政策基本法が制定されてからは、関係行政機関、経産省資源エネルギー庁内に設置されている総合資源エネルギー調査会からの意見を取りまとめ、経済産業大臣が案を策定し、「エネルギー基本計画」として閣議決定される流れになっています。

首相官邸ホームページより
http://www.kantei.go.jp/jp/kakugi/ (首相官邸ホームページより)

エネルギー基本計画

社会の発展に伴い、エネルギー問題は年々深刻に議論されるようになりました。これにより政府はエネルギーは国民生活に必要不可欠なものであるため、安定的、持続的にエネルギーを確保できるようにと2002年にエネルギー政策基本法を策定しました。

この中の第十二条に、計画的にエネルギー政策を進められるように「エネルギー基本計画」を定めるようにされていて、目まぐるしく変化する社会情勢を考え、少なくとも3年ごとにこの計画について検討を加えアップデートしてくことが記されています。

現在までのエネルギー基本計画

第一次エネルギー基本計画 (2003年10月7日閣議決定)

自民党政権下小泉総理大臣時代に中川経済産業大臣から提出され閣議決定されたもので、法案制定後初めて出された基本計画で、主には資源国でない我が国においてエネルギー確保について、石油・石炭・ガスなど輸入に頼っているものを十分な備蓄量で運用し、同時に準国産エネルギーである原子力発電を推進していくとしています。

>>第一次エネルギー基本計画(PDF)

第二次エネルギー基本計画 (2007年3月9日閣議決定)

自民党政権下、第一次安倍政権に、甘利経済産業大臣より提出され閣議決定された初回の改定です。エネルギー基本計画の策定から3年が経過し、アジア諸国の経済発展に伴い、国際的なエネルギー価格の高騰が問題視されるようになったため、原子力委員会により策定された「原子力政策大網」にそって、今後原子力エネルギーを第一に推進していくことにし、自立した環境適合エネルギーとして原子力発電の積極的推進に舵を切りました。そして従来の石油等化石燃料を第二としました。第三には省エネと環境保護に関することが含まれます。

これは1997年12月に京都で署名された気候変動枠組条約に関する議定書、通称「京都議定書」により、2008年〜2012年の温室効果ガス排出量削減のためには必要なものでした。しかしこの京都議定書は当初なかなか先進国や途上国の理解が得られなかったため発行が見送られていたものの、2005年1月26日に発効となったことから、第二次エネルギー基本計画にも盛り込まれることになりました。

>>第二次エネルギー基本計画(PDF)

第三次エネルギー基本計画 (2010年6月22日閣議決定)

民主党政権下、菅総理大臣の下、直嶋経済産業大臣により提出され2回目の改定が行われました。第二次からの3年間、国内外のエネルギー需給の問題はさらに悪化しました。2001年9月11日、NYのテロ発生以降、頻発する国際的なテロによる中東からの石油供給の懸念などにより、エネルギー価格はさらに高騰しました。更に国内では頻発する地震などによる地質学的リスクから、エネルギー確保が難しくなることで国内のエネルギー市場も冷え込み、2008年のリーマンショックの影響などもあり、経済的ダメージが大きい中先進国として環境保護への取り組みと、エネルギー確保の両立が大きなテーマになりました。

今回の改定でも大きな課題はエネルギー確保になっているものの、テロや地球環境変化による地質学的リスクから「安全なエネルギー確保」が検討され、原子力についてはより安全な基準を、新エネルギーとして水素や再生可能エネルギーの利用推進も盛り込まれていました。

これらの背景には2008年8月に行われた洞爺湖サミットで京都議定書後の2050年までの温室効果ガス排出量50%削減を192の国や地域で共通認識として合意したこと、2009年9月の国連気候変動首脳会合で1990年に比べ2020年には温室効果ガスを25%削減すると名言するなどもありました。同年12月には新成長戦略の柱として「環境・エネルギー大国」を目指すことが掲げられ、国民にたいしてよりいっそう温室効果ガス削減を求め、2010年1月からは「チャレンジ25」キャンペーンなども多く行われました。

これは、2009年自民党から民主党へと政権が交代する中で、民主党のマニュフェストにあった内容をそのまま当時の鳩山首相が国連の場で話したもので、専門家からは実現の可能性について多くの疑問が起こったことから、すぐに試算のやり直しなどが行われていました。その後2012年1月には温室効果ガス25%削減の撤回を表明することとなりました。

2011年3月11日、東日本大震災の発生により状況は一変します。震災への対応を巡り2012年12月には政権が自民党に戻り、原発への信頼性は低いものになっていきました。政権交代直後、1990年度比25%削減という目標は2005年比で6~7%削減へと修正されました。

>>第三次エネルギー基本計画(PDF)

第四次エネルギー基本計画 (2014年4月11日閣議決定)

自民党第二次安倍政権下で茂木経済産業大臣が取りまとめ閣議決定されました。東日本大震災の発生で日本のエネルギーへの考え方は大きく変更せざるを得なくなります。3年ごとに検討するはずのエネルギー基本計画も策定が難しくなり、かつ震災からの復興の最中、2012年12月には政権交代も行われ、その提出は大幅に遅れました。

出てきた内容は、再生可能エネルギーの導入加速化と石油などの化石燃料による発電の効率化を目指した研究開発、そして2011年の震災により停止せざるを得なくなった原子力発電所の廃炉に向けた動きと、福島原発事故の後処理に関するものでした。

原発の代わりとなるエネルギー源は輸入資源にたよる火力発電所が中心となりました。火力発電所はフル稼働し、これにより二酸化炭素の排出量も上昇、また石油・石炭などの天然資源価格の上昇により、国内の電気料金は震災前と比べて20%程度高くなりました。

結局第四次エネルギー基本計画では、原発の利用停止から化石燃料中心の電力供給へとシフトせざるを得ないという現状と再生可能エンルギーを増やし、次世代エネルギーへの期待が寄せられるも、どれも安定供給や実用化へは不十分で模索中であるということになりました。

>>第四次エネルギー基本計画(PDF)

第五次エネルギー基本計画(2018年7月3日)

自民党第二次安倍政権は長期政権となった。震災後2回目の改定となるエネルギー基本計画は世耕経済産業大臣により提出され閣議決定しました。この基本計画でも脱炭素社会を唱える一方で、原発停止による需給の崩れは、未だ化石燃料に頼らねばならない現実を浮き彫りにしていますが、2030年に向けた「エネルギーミックス」を第一に掲げた内容となりました。

エネルギーミックスという考え方は、どれか1つの発電方法を主として考えていくのではなく、様々な発電方法により安定的な電力供給を目指すものです。日本は現在火力発電が全体の80%程度を占めていて、水力で約8%、再生可能エネルギー全体で約8%、原発は3%となっています。ほぼ火力発電に頼っているということですが、この火力を動かすための燃料の88%を輸入に頼っているため、外的要因によりその供給や価格が左右されています。これを2030年までにエネルギーミックスで解決していこうというのが今回の計画のメインです。

図:資源エネルギー庁(2030年エネルギーミックス実現へ 向けた対応について資料より

上図からもわかるように全体の半分くらいを原子力発電と再生可能エネルギーでまかなっていくということで、前回の基本計画になかった原子力発電の再稼働について明言しています。つまりエネルギーミックスを実現するためには原発再稼働は必須事項ではあるものの、過去の計画のように原発をメインに拡大していくというのではなく、安全性をより高い水準で保った中で、更に最低限の依存度にしていくというものになっています。ここには国民からの信頼度回復という大きな問題がのこっているとも言えます。

>>第五次エネルギー基本計画(PDF)

第六次エネルギー基本計画に向けて

2018年に出された第五次基本計画から2021年で3年を迎えることになります。2020年10月には資源エネルギー庁から「エネルギー基本計画の見直しに向けて」という資料が公開され、現在の状況とこれから目指していくものなどが情報提供されました。

すでに第五次の段階で2030年、2050年に向けた取り組みなどが明言されているため、基本路線はエネルギーミックス実現のための具体的な進め方などになりそうです。

新型コロナウイルスがもたらす影響

前回の基本計画では予想されなかった問題として2020年初頭から大きな問題としてあり続けている新型コロナウイルスの問題があります。これにより私たちの生活は大きく変わっていきました。これらがエネルギー利用に与える影響も大きくなっていくと考えられます。

在宅勤務によるエネルギー供給の変化

政府も推奨する在宅勤務は社会に大きな影響を与えています。企業はオフィスを持たなくなり、オフィスでのエネルギー需要が一般家庭での需要へとシフトすると考えられます。都市に集中していたオフィスへの通勤がなくなることで、交通インフラによる温室効果ガス発生の低下も予想されています。自宅での電力利用の増加は国民の省エネに対する考えの広まりも期待されます。

レジャー施設・飲食店などでの電力利用

企業による電力利用も現象します。会社や工場などでは最低限の人によるオペレーションにより電力消費量の減少が予想されます。レジャー施設などでは混雑を避けた営業、飲食店などでは宅配やテイクアウトなどの普及により、店舗スペースの縮小などによる電力利用の変化もおこるでしょう。

地質学的リスクは回避されていない

日本では地震や台風などの天災による地質学的リスクはどのエリアでも考えていかなければならない問題です。近年では火山の噴火なども懸念される問題となっています。2011年に震災によりエネルギーの考え方が大きく帰られた教訓を生かし、それらが発生した場合のエネルギー確保が可能かどうかも考えていかなければなりません。

より小さなコミュニティでの電力確保の必要性

緊急事態宣言により人々の暮らしは大きく変わりました。飲食店の営業時間の短縮などは、夜の外出抑制に繋がり、長期間に渡っている新型コロナウイルス問題により人々は自宅での生活に慣れてきています。自宅にいることから自宅での電力消費を考えていく時代になりそうです。これは有事の際に発電所からの電力をどのようにして確保するかという問題にもなります。先にも述べた地質学的リスクが実際のものとなった時、送電インフラが切断された場合どのようにするのかなどは1家庭や近隣住民など小さなコミュニティでも電力確保を考えていかないといけない時代になってきました。

経済から環境へ

ESG投資拡大の拡大

今、世界中でESG投資は拡大しています。Environment(環境)、Social(社会)、Governance(ガバナンス)の3つの観点(頭文字をとってESG)から企業の将来性や持続性などを考慮して投資先を選ぶというものですが、Appleなどが自社の電力消費を100%自家発電にしたように、BCPという観点からも重要な考え方になってきます。これらが大企業はもとより中小企業にまで浸透していくことで、より環境保全に繋がる経済活動が活発化していくことになります。これらをクリアしていないと投資をうけられなくなってくる時代がやってくるでしょう。

ESG

循環型経済(サーキュラーエコノミー)で省エネ

企業が作る「物」や「価値」についてもこの循環型経済という考え方もエネルギー確保の観点から重要になってきます。ただのリサイクルに止まらず、廃棄していたものを再利用して利用できるように設計し商品にしていくことで、エネルギー消費量の削減などに繋げていく必要があります。

関連記事:「廃棄」を「資源」へ!サーキュラー・エコノミー

政府主導から小さなコミュニティでの大きな問題として

エネルギー問題は今までエネルギー基本計画などのように政府主導で考えられ私たちの暮らしには直接関係ないものでしたが、2011年東日本大震災の時に起こった計画停電などから民間でも話し合われるようになってきました。

そして、これからは1家庭や近隣の住人らの小さなコミュニティでも考えていかなければならない時代となってきます。それは災害の多い日本ではとても重要なものになってきます。